オイラー方程式とギブズ・デュエム関係を導出する!
はじめに
この記事では熱力学の重要な関係式である
・オイラー方程式
・ギブズデュエムの関係
を導出します。
オイラー方程式
閉鎖系における単原子分子理想気体について考える。
Sをエントロピー、Tを絶対温度、Pを圧力、Vを体積、μを化学ポテンシャル、Nを物質量とする。このとき
が成り立つ。これをオイラー方程式という。
以下のように証明される。
U(S,V,N)を2次以降の項を無視してテーラー展開すると、
となる。ここでU(S,V,N)は1次同次関数、すなわち
が成り立つ。
λ=1+αを代入する。α≪1(1と比べて十分小さい)の時、Uは(S,V,N)の周りでテーラー展開できて
両辺からU(S,V,N)を引いて
ギブズデュエムの関係
が成り立つ。これをギブズデュエムの関係という。
以下のように証明される。
オイラー方程式U=ST-PV+μNの全微分は
dU=TdS-PdV+μdNを引けば
となる。
オイラー方程式の使い道
オイラー方程式は例えば
で表されるエンタルピーや
で表されるヘルムホルツの自由エネルギーや
で表されるギブズ自由エネルギーを
と変換できる根拠となる。特に3つ目の式から「化学ポテンシャルμが1molあたりのギブズ自由エネルギーG/Nを意味する」ことを示唆している。
ギブズデュエムの関係の使い道
温度Tを固定する(断熱変化)ときは、
圧力Pを固定する(定圧変化)ときは、
という式が得られる。ただしv,sは1molあたりの体積及びエントロピーである。
SEIRモデルから予測される新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の今後
新型コロナウイルス感染症について
参照:新型コロナウイルス感染症について | メディカルノート
新型コロナウイル感染症は、新型コロナウイルスである“SARS-CoV2”による感染症のことです。WHOはこのウイルスによる感染症のことを“COVID-19 ”と名付けました。2019年12月以降、中国湖北省武漢市を中心に発生し、短期間で全世界に広がりました。2020年4月5日現在、新型コロナウイルスは世界200以上の国・地域に広がり、感染者はアメリカで32万人、スペインで13万人、イタリアで12万人など甚大な数に及びます。新型コロナウイルスは中国で発生したと考えられていますが、アメリカやスペイン、イタリアなどのヨーロッパ地域に感染の流行が移り、感染者・死者ともに発祥地の中国を大きく上回った状態となっているのが現状です。日本国内でも、4月5日時点で確認された感染者は2,291人に上り、69人が命を落としているとのことです。
SEIRモデルとは?
SEIRモデル(エスイーアイアールモデル)とは感染症流行の数理モデルで
感染症に対して免疫を持たない者(Susceptible)
感染症が潜伏期間中の者(Exposed)
発症者(Infectious)
感染症から回復し免疫を獲得した者(Recovered)
から構成される。
SEIRモデルの式は次のように記述される:
この式を型としてこれまでの感染状況から適当なパラメータを定め、今後の感染状況の予測を行う。
得られる解はカオス的な振る舞いをするので、この微分方程式の解を直接求めることは不可能であるので、今回はエクセルを用いて適当な近似の元で数値解析を行なった。
(訂正:lim(t→0)をlim(h→0)に)
今後の予測は人々の振る舞いによりパターン分けを行なった。
またワクチン開発については予測がつかないので今回は考慮しないこととし、致死率は3%とした。
解析結果
(1)外出自粛を全く行なわなかった場合
縦軸は人数、横軸は日本で感染が開始して(2月中旬)からの日数を示す。
横軸を見てわかるように
左:長期スパン(終息まで)を示すグラフ
右:短期スパン(直近数ヶ月)を示すグラフ
である。
青線が無症状感染者、橙線が発症者、黄線が回復者、灰色が死亡者を示している。
解析結果から以下のように予測される
終息までの経過日数:300日(今年の12月中旬まで)
累計感染者数:4000万人
最大患者人数:1500万人
死亡者数:150万人
えらい数字(泣)
(2)一律8割の外出自粛を行なった場合
メディア等では8割の外出自粛が呼びかけられていますが、実際はいかほどの効果があるのだろうか?
解析結果から以下のように予測される
終息までの経過日数:600日(来年の10月中旬まで)
累計感染者数:3700万人
最大患者人数:500万人
死亡者数:150万人
全く外出自粛をしなかった場合と比べて最大患者人数が1/3になるが、その分終息まで倍の日数がかかる。累計感染者数はあまり変動がないようだ。
またテレビ等でよく見る「新規感染者数のグラフ」は下のようになっている。
外出自粛を行なって大きく新規感染者数が減ったように見える。
しかし終息までのグラフを見るとその罠に気づく。それが下のグラフだ。
横軸の大きさに留意してほしい。「大きく新規感染者数が減った」ように見えたのは実は0と100の間にある小さな突起である。ここから分かるように
一律8割の外出自粛はそれほど意味がない!
ことが分かる。一律8割の外出自粛は医療崩壊を起こしうるものである。
(3)一律99%の外出自粛を行なった場合
これは少々ぶっ飛んでいる気がしないでもないが、検証する価値はあるだろう。
解析結果から以下のように予測される
終息までの経過日数:300日(今年の12月中旬まで)
累計感染者数:4万人
最大患者人数:1.2万人
死亡者数:1500人
「新規感染者数のグラフ」は下のようになっている。
しっかりと外出制限の効果が出ていることがよく分かる。
結論
メディアで言われる「8割の外出制限」はあまり意味がない。あくまで一時的なものでこれからもっと締め付けの強い外出制限を要請するのではないかと予想される。
少なくとも9割以上の外出制限を全員が心がけるべきである。
一人一人が「感染しない」「感染させない」心がけを行うべきである。例えば必要な外出ではマスクをつけ、他人との間隔をあけるなどである。このような心がけは感染率が下げることにつながるので、外出制限と同じ効果が見込めるはずである。
追記(4/15)
致死率を1%にしたところ死者数が42万人となりました。本日公表されたシミュレーション結果と全く同じです。